キムチ鍋に尻を拭う

思いたち
牛の小腸を買い求め
脂抜きして
鍋にする

豆腐、白滝、エノキ、キャベツ、ニラ
ニンニクに鷹の爪

もつの甘味
キャベツの甘味
ニラの香り
ニンニクのアクセント

博多で食べた
思い出に浸り
楽しみな夕餉と
なるはずだった

数ヶ月前
知人にもらった
お手製キムチ

少し食べて
家人に任せておいたはいいが

冷蔵庫を見てみれば
奥の奥に潜んでいた

生来の貧乏性
捨てるに忍びなく

火を通したら
食べられるかと
鍋の味付けに
全て投入

アテが外れた
週末の食卓

キャベツを食べてもキムチ味
ニラを食べてもキムチ味
もつを食べればキムチ炒め
ニンニクを加え
より強まるキムチ一色

こんなはずではなかった

誰が悪いわけもなく
ただ目の前のキムチ鍋

目論見が甘かったと
後悔しても後の祭り

落胆よりも怒り
誰にも向けられない憤怒

自棄気味に
キャベツを頬張り
鍋を減らす

遮二無二
食べ続け

言葉なく
失敗作に向かい

キムチを処分して
二度といい加減なことはせぬと

滑稽な自嘲とともに
心に誓った