2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

体を動かす

行き詰まった 精神を救うのは いつだって身体で それは 思考の迷宮から 魂を解放する 考えなくてもいい 考える余裕をなくす 考えずとも 体は動き 生きていけると 信じられた時 試行錯誤は留保され 痺れた体に 身を任せ 今を生きられる 思考への偏重が 精神を…

脳裏の浜辺

ぼやけた頭に 浮かぶ景色こそ 淡く 覚束ない 心が求める所 徹夜明けの 寒々しい朝に けだるく 温い風に吹かれた 波打ち際を想う たどり着くことなどない 悩みも 苦しみもない彼岸よ 眠気とともに 揺蕩う意識が 繰り返し想起する 浜辺よ 恐れなどない 夏の夜…

表現未満

表現が生まれないのは 中身がないのか 表出が下手なのか 己の中に 何もないと 苦悶に葛藤を重ね 空っぽで すっからかんだと 己を卑下する そんな己でも 泣き 笑い 恐れ 苦しむ その喜怒哀楽が 取るに足らないものだと さらに 己を貶め 負のスパイラルは 加速…

預生

教訓も説教も 善意からなるものなれば 頭を垂れて 有難く拝聴しろと いくら言われても 聞けないものは聞けない 生き方が下手であれ 遠回りをすることになれ 己の生は 己で決定し 失敗も引き受ける 潔さを選ぶ 駄目だろうが 愚かだろうが 人に言われて 生を預…

行程

ゆく道の長さに 気持ちが萎える時 駆り立てるのは 到達への予感 少しずつ 積み重なる距離 ひらける展望 小休止して 満ちる気 どれほど遠くても 近づいていると 信じられるなら まだ歩いていける 終りがあると 気を保てるなら 終わりに向かって 進んで行ける …

反復作業

果ての果ての果てまで 自転車を漕いで 日は陰り 風は冷たくなった 太ももだけ 熱く 痛く 腫れぼったく 疲れ切っていた それでも どこにもたどり着けない 足が痛んでも 腹が減っても 眠くても 自転車を 漕ぐしかなかった もうすでに夜 誰もない 何もない ペダ…

オカルト主義者

ワクチンは毒だ 体に入れるな そんな説教を 滔々と2時間も聞かされ マクロビ 無農薬野菜 栄養学を無視した健康法 霊波 魂の浄化 これでもかというくらい 胡散臭い 話の羅列 なかなかいないが いてもおかしくない ステレオタイプの オカルト論者 髪も切らず …

アル中風呂

酒の匂いを 銭湯中に撒き散らし 四肢は震え まともに歩けない 酒に溺れ 仕事を無くし 家族は出ていった 八つ当たり 誰かに会う度 愚痴りたおし 必ず 金を無心する 人は離れ 財産もなくなり 健康も失った それでも 酒を手放さず 飲んで 銭湯に入る 湯に浸かり…

凝り

凝り固まり 一ミリを動かず 痛みが走り 呻けども 変わることなし ほぐすには 手遅れと 開き直って 痛みを抱え生きるか 一つ一つ 丁寧に 時間をかけて 凝り固まりを ほどいてゆくか 長年続けた 偏屈な姿勢が祟り 今の痛みが現れたなら 痛みを受け止め なお 痛…

回復

ゆっくりと 体が戻る だるさ 重さ 痛みは 徐々に薄れ 熱は下がり 体が軽くなる 未だ 力の入らない 浮遊感を伴う 非現実 それでもなお 戻る安堵に 癒やされている

だるくて 熱が出て 腹痛に 筋肉痛 動けない 動きたくない こんな日は 己を病を認めてしまえば 床に入ったまま うつらうつらして 甘美でアンニュイな 時を過ごせる

否定そして否定

暗さと愚かさと プライドの高さ 怠惰と高慢と 人見知り 虎になった男は どこにでもいて 私の中に 棲んでいる 過剰な自己韜晦は 社会との断絶をもたらし 社会の否定 他者の否定 自己否定に至るのは わけなかった 誰かを断罪する己も また何者でもなく むしろ …

寒夜

寒い夜は むかしのこと 思い出す 寒い夜は ふとんの中で 思い出す 寒さに 身をうずめ こわばりながら あの 恥ずかしさや 悔しさを 屈辱で 耳を赤く染め 顔を熱く 火照らせて 寒さの中 身を震わせている こんな夜に つらい過去が よみがえるのは きっと 寒さ…

つながらない

つながらないということを ごまかすこと 忘れることが人生ならば それは 心の隙間に浮かび上がり 刹那 わたしを闇へ引きずり込む 忘れても 思い出し ごまかしても 誤魔化しきれず 一個の浮遊体は とどまる地を求め さまよえど 彷徨いきれず ヘドロの淵に 漂…

還ってくる

還ってくることが 安堵なのか 失望なのか 危機からの生還ならば 安堵には違いない だが 還り来て 停滞となれば 喜びはない 喜びはないものの 還った現実は 還る前とは 違って見える 一つ終わり 戻ってみれば 還る場所があることも 還る目的があったことも 失…

後の世の明日

とめどなく 時は流れ 人の世の 痕跡も風化する 風が吹くたび 砂となり 舞い上がり 散り散りになって 世界へ飛んでゆく そうして 全球に拡がった 我々の残滓は 気づかれることなく なにかの肥やしになり 万分に一つ 旧き記憶のダミーとして 誤作動を誘発する…

会って飲む

再会の喜びは すぐに消え 目の前の 盃を傾け 頭の中は おぼろげ 記憶なく 胃が重く 頭痛がきつい 何をしたのか 後悔することさえできぬ 私はわたしであったのか 愚行には 違いなけれど 必然にすら 辿り着かぬ

夜の寄る辺

寒き夜は 暖かさ求め 路地裏を徘徊し 焼き鳥の匂い おでんの湯気 嬌声ざわめく間を縫って 人の熱気に当たる 夜いよいよ更け 人もまばら 酔っぱらいの叫び声 夜空に響き 寒さ増して おでんの屋台も 引かれゆく 公園のベンチに 路地裏の角に 寝転がる人々は 帰…

雨粒の下に

曇天の秋の下 雨粒混じる風に打たれ 鉄橋を渡れば アイルランドの片田舎に 迷い込んだ錯覚にとらわれる 寒く 風の音だけが聞こえ 生命の気配なく 灰色の街 雨と土の匂いが 空気をかき回し 体を打つ冷たさは 五感を閉じさせる 我が家を目指し 俯き加減で急げ…

当たり前の日

川辺に 鴨が飛来していた まだ暑い だが 日差しは 強くない 風に吹かれれば 汗も出ず 緑残る 並木道を ぶらぶら歩いて 銭湯で 一風呂浴び 飲み屋で 盃を傾ける なんのことはない 戻ってきた日常 そこに浸れる有難みを 噛みしめるだけで 他に何も出ては来ない…

眠りの果てに

眠れば眠るほど 眠気は増し 寝て起きて 飯を食い また寝て 起きては 飯を食って寝る 枯渇した精神は 眠ることで 癒やされるどころか ますます 思考を失っていく 眠りの中に生き 眠りにおいて 死んでいる 満たされていくのか 虚ろになっていくのか 分からない…

解放の後

解放の後には 虚無が残り 解放は 何もなくなることへの 快楽である 苦難と忍耐 綿で包まれるような不快 そんな負荷が 無くなり 何もしなくていい 何も苦しまなくていい 気持ちよさ だが 一度過ぎれば 苦しまないだけの 無意味が 私に問いかけ 再び 苦悩へと …

煮え切らない疲れ

少し また少し 気がつけば どんより いつからか どこからか 体を蝕んでいた 忙しさも 激しくなく 気候も 過ごしやすかった なのに 何かに 憑かれているかのような 澱が溜まり 淀み 停滞し 気力を奪われ 動けない 原因も分からず 煮えきらず 眠く だるく 時が…

塀の上の猫

まるまるとした 猫が寝ていた 塀の上 秋風吹き 人の世も落ち着き 街には賑わいが戻り 天気もいい つかの間の 平穏を噛みしめ 猫の行く末を思う

古き良き

落ち着いた下町の 懐かしい銭湯 古い だが汚くない ぽつりぽつりと 客は訪れ とりとめのない 話をして帰る 風呂上がりに 近くの酒屋で 一杯飲めば 静かな この街に 親しみが湧く

行きたいところ

行きたいところへ行く 金も時間も 労力も困難も 問題じゃない どれほど遠かろうと 行きたければ 近づける 調べ 金を貯め モノを揃え それらに 何年かかっても 一つ一つが 到達の過程ならば 全ては 前を向いている 一歩ずつ 踏みしめながら 進むのは 素敵な快…

叙情愚詩

コロナのうちに 人が死んでいた コロナのうちに 大病を患っていた コロナのうちに いなくなり コロナのうちに なくなった 痕跡も残さず 言葉も 感情も 分からないまま 会えなかった 長い時が 人を途絶えさせ 人を無くした 人は死ぬ いづれ 必ず 人は死ぬ そ…

出し切る

どんな小さなことでも どんな短い時間でも 限られた 狭い範囲で 出し切る 自分には もう出来ないのか もうダメなのかと 問いかけ つらくても 苦しくても これ以上出来ないと 自信を持って 頷けるまで あと一回 あと一歩 あと一秒 己の体と 精神を内観しなが…

謹慎明け

居酒屋での再会 人の顔が見え 見えない人もおり まずは 場所が開かれて 安堵していた 気の遠くなる 隔絶を耐え 世間を腐し 愚痴をこぼし 気が弱くなりながら 待ったのだった 届かぬかと 思いながら 何も出来ないまま 腐り果てていく心身を 眺めるだけで 時を…

台風傘

台風になると 血が騒ぐ 外へ出て 街を彷徨い 飛ばされてゆく あらゆる物に目を細め 己の体に 打ちかかる雨粒の痛みを感じる 突き上げる風に 傘は抵抗し しがみつけば 飛ばされ 舞い上がり 空へ昇ってゆく 高く高く 曇天の空へ 壊れ 突風を受け はかなさとと…