春の夢の甘美

暖かき
春の夜

降りそそぐ
花粉に惑うたか

在りし日の
家族の夢

父と母と訪れた
今はなき遊園地

桜の花びら散る季節
ベンチで食べる弁当
蜜柑

若々しい母
穏やかな日射し
団欒の日々

むかしむかしの
記憶の底に

誰もが持つ
幸福の想い出

甘美で
切なく
二度と戻らない幸せが

私を締めつけ
いたたまれない哀しみにおそわれる

美しい過去は
いつまでも脳裏に残り

私を支えながらも
おびやかし

美しければ美しいほど
激しい喪失感で
心を苛む

幸せな夢の苦悩