ホタルイカ

今年の初物

親指ほどの姿態
キラキラと
光沢を放ち

口に含めば
弾力と
甘みと
ワタの苦味

舌に絡み
咀嚼すれば

おぼろげな
潮の香り

可愛らしい
パッチリした目が
いまだ
光を失わず

生命を丸ごと
飲み込む快楽と

春の息吹を
摂り込む贅沢が

またわたしを
世界に向かわせる

季節をまわす営みが
食卓に織り込まれて

生き物であることが
うれしくなる春