#詩

行使する覚悟

力があれば 権力があれば 気に食わないあいつを 滅茶苦茶にできるのだろうか 小さな局面で 己の権能を振るい 優越感に浸ったり 得意気になることはあれど 相手の人生を左右するほどに 誰かを破滅させる 度胸などあるのだろうか 蹂躙し 駆逐し 絶命せしめる …

無聊を慰める

退屈は 平和であり 地獄である 誰もが求め 誰もが恐れる 小説を読み 無聊を慰める 懸命な作品に 心打たれるほどの出会いは 滅多になく 多くの駄作 模倣 機械的な量産作に 時を費やし もはや期待を失い それでも惰性で読む 読まなければ 恐ろしいから 読む 読…

愚考の秋

自分が作った世界に生きるなら 全て思いどおりになるだろうか なんの不自由もなく 誰もが敵愾心なく 自分を信じ 常に友愛の情をもち 困難はなく 暇つぶしを探しながら 食べたい物を食べ 飲みたい物を飲み 行きたい所へ行き 好きな娯楽に興じ 時には 権力を振…

体の声

つらいならつらいと 痛いなら痛いと発して 四肢に異常が宿り 治癒に至るまで 不安に苛まれる しかし 怖いのは 体の声が聞こえないこと 痛くもない 苦しくもない なのに 突然 体が動かなくなる 感知できない不安 感覚が信用できない 感覚が浮遊している 異常…

読むことの対価

何週間もかけて 読み終えた大作 語る言葉がなければ 一言二言で 感想は終わる 読む力 語る力 二つが合わさり 読んで語る 語ることで 読みは深まり 世界は広がり 再び読みたくなる 読むだけでは完結しない 読み込んだなら それに足る読みからの学びを 発信せ…

動く体動かぬ体

動かして 初めて 動かぬ我が身を知る 老いが迫り 怠惰が体を蝕む いづれ停止する予定の 体よ 動け 動け 動かぬまでも 動く意思よ 伝われ

神話

過ぎ去った世界が 今に至るまで 言葉を紡ぎ 意味を作る 世界の成り立ちと ここに我々のいる理由 神を語り その崇高さと愚かさが 我らの身に降りるように 今を創るための空想 壮大で 想像の果てに挑んだ創造 神を作り 神を知り 下僕が安堵する

真摯に怠惰

出鱈目に飲んで しこたま酔っ払って 記憶も 健康も 取り戻せなくなって 堕ちるところまで 堕ちたなら これ以上堕ちない安堵があり 安心し続けるために いつまでも酔って だらしなくしていなければならない 真摯に怠惰でなければならない

登る意味

階段を登れば 何が見える 徒労かもしれない 一段一段を なぜ登るのだ 理由なら いくらでも探せるだろう 人生に言い訳が必要なように 一つの行いにも 何か意味が欲しいと思うだろう しかし 意味は作り出しているだけ 因果は 結びつけているだけ 理由は必然で…

蠱毒の言葉

どこかの組織に入り 働き始めてみれば 人権など どこ吹く風 えげつない搾取と 大っぴらな差別 そんな現実を目の前にすると 薄汚く 汚泥に塗れた 何も考えない機械となる 世間の言葉など 薄っぺらい綺麗事に聞こえ 正しい理屈も 権利も思想も 意味を持たない …

広いこと

空と大地の広さに圧倒され 何もない世界に 救われる

旅立つこと

何度も夢見て 望んだ地へ 今旅立つ 不安などない たどり着く風景に 心躍らせ 未だ見ぬ世界へ 飛び込む期待が 横たわる体を興奮へ導く 未知が 欲望の対象であることの幸せよ 旅立つ寸前の今 世界は薔薇色にしか見えぬのだ

同じ思い

類型化された感情に 今日も振り回される ありきたりでありながら 切実な思い 誰にも どこにでもある なんということもない感情 苛まれ 悩み尽くし 終わってみれば 馬鹿馬鹿しいとすら思える 多様でありながら おそろく画一的なヒト 単一であるつまらなさと …

大きなものの終わり

手放すことで 前に進むなどない 前に進むものが見つかってから 捨てるのだ 別れても 新しい出会いなど すぐには見つからない 見つけておいて 別れる 斯様に まずは手にしなければ駄目だ 今のままだと駄目だからと言って 捨てるところから始めてはいけない そ…

死までの時

今が人生で一番若い時だなんて 老いていく恐怖を煽り 限られた時間を意識させ 追い込んだって仕方ないだろう 何事かを成さねばならぬという 強迫観念 充実した結果を 生きているうちに手にしたいという欲 好きならば 好きにやってくれ 何事も成さず 淡々と死…

盛期終わる頃

しとしと降る雨の 土の匂い立つ 夏草茂る野に 虫の音交じる晩夏 生暖かい朝の空気の中 ほのかに 忍び寄る秋の気配 離れゆく夏 盛期終わる頃 また人が死ぬ

本当に冷戦が終わった

鉄のカーテンに閉ざされた 冬将軍の国 雪解けの苦難 緊張の連続 分裂と縮小を強いられながら 戦いを経ることなく 冷戦は終わった 彼がいなければ どうなっていたことか 未だにらみ合いが続き 破滅の予感の下 戦いは避けられたのか 戦乱と混迷は 今より増して…

愚者の風

混沌に在り 腐乱した瘴気に浸り 見えず 聞こえず 揺蕩っている 一陣の風 開けた視界に 盲進して 答えを掴もうと すべてを捨てる 見えなかった世界にいて 世界を見なくなった 躊躇を失い ただ一つだけを目指す 一筋の光は 希望であり 欲望である それが 悪魔…

育てる

冬の高い空の下で 麦を踏むように 負荷をかけ 適応して 強くなる生命 しかし いくら踏みつけたとて 種まで踏み潰しては 生命は消えるし 寒さや大雨から 守ってやらねば 健やかには育たない 厳しくしつけ 追い込んで 成長を促すのなら その裏で こまめに気を…

命の数々

世界は分からない 未知を前に挫けるか これから知る喜びにうち震えるか 分からない有象無象が 幾らでも湧いてきて その一つ一つに 切実な生命が宿り 一喜一憂しながら かけがないのない時を生きている 幾らでも死に 幾らでも生まれる 自分にとって 何よりも…

終わり

ひとつ ふたつ みっつ ようやく終わった まだ残りはあるが 安堵に包まれる 人生も終わりに 安堵できたなら どんなにいいことか。

最後の空元気

断続的な徹夜 終わることのない仕事 疲れ果て もう駄目だと思いながら なお 体に鞭打つ ある時 体が軽くなり 頭もスッキリ 高揚した気分で 疲れも感じない 最後の空元気 消える直前に 大きく燃え上がる炎のごとく 体は苦痛を取り去った 爽快な気分で この後…

破却へ

十全な力があったなら 人を顎で使い 気に食わなければ泣かせ 肉体的にも 精神的にも 疲弊させ 徒労を強い 人生を破滅させるのを 快楽として味わうだろうか あるいは それだけの権能を持っているだけで いつでも行使できる余裕を 楽しむのだろうか 人を動かし…

旅に出れば

旅に出れば しがらみが 解きほぐされて 一人行く 湯けむり立つ町の 宿で出会った人の優しさ 港町にて 騙されて泣いた夜 夕暮れの山村を 離れゆくやわらかい陽 恋しくなった住む街を想い 一人さびしく進みゆけば 孤独の中の自由を吸い込む あの時 感慨に耽っ…

眠れぬ者

眠りについては 起こされて 眠りについては 起こされて 眠りについては 起こされて もう眠れない 朦朧とした 半覚醒のなか 悪夢ともつかない 過去の記憶が まとわりつく 安眠など許さぬ お前は二度と 穏やかに生きられず 安らかに死ねないのだと

何が正解か

なにが正解か ずっと考えて 欲しがって 人生に正解などないと 分かっているのに それでも 求めてしまう 効率だとか 合理性だとか 多様性だとか 個性の尊重だとか 美しく きれいな言葉に近づけば 正解が出せるんじゃないかと 幸せに暮らせるし 人から叩かれず…

生きているのか生かされているのか

頑張るのは楽しい 頑張らされるのは苦しい 今 必死になって疲れ切っている己はどうか やっているのか やらされているのか 自分の意志で飛び込んだ世界は ノルマで雁字搦め 疲弊を重ね 飛び出した 後に残るのは虚無 再び 世界に入り 疲れ切ってしまった やっ…

疲れた酒場

タバコの煙に 白く霞む 場末の酒場 下卑た笑い声が 疲れた頭に突き刺さる 一杯 また一杯 何も考えたくない 酒は回り うすぼやけた意識に遊べば 今日も終わる 明日もくたびれて 酒を飲んで紛らわす 何を? それは人生

光芒

旅の終わり 力尽き 光の糸を引きながら 落ちてゆく 輝きを帯び 暮れゆく空に描かれた 放物線は 夏の宵の 気怠さの中 脳裏に刻みついた

脳が固まる

単純作業を繰り返せば 繰り返すほど 目はシパシパし 脳に霧がかかり オーバーヒート寸前の パソコンのように 思考が固まる 何もしたくない 何も考えたくない ひどい筋肉痛に襲われた体のように 思考を動かすのがつらい もういい 眠りたい それでもなお 働か…