破却へ

十全な力があったなら

 

人を顎で使い

気に食わなければ泣かせ

 

肉体的にも

精神的にも

疲弊させ

 

徒労を強い

 

人生を破滅させるのを

快楽として味わうだろうか

 

あるいは

それだけの権能を持っているだけで

 

いつでも行使できる余裕を

楽しむのだろうか

 

人を動かし

喜怒哀楽も思い通り

 

そんな力があれば

人生は愉快なのだろうか

 

弱い者いじめや

嗜虐の快楽に耽ることなどあるのだろうか

 

そんなはずないだろうと

心が訴えても

 

そんな価値観だって

社会に適応してきた結果にすぎない

 

善も悪も

後付けで植え付けられた

足枷なのだとしたら

 

自由は恐ろしく

時に無慈悲でもある

 

私を縛るものから

自由になりたい気持ちと

 

何もない私を

縛って欲しい気持ち

 

そんな矛盾に満ちたわたしを

確かめるために

 

今持っている価値観と

真っ向から逆に振れ

 

己を放り出したなら

何かに気づけるのだろうか