2018-11-19 忘れていくあいだ 詩 #詩 あの時の 潮風の匂い きらめく水面 駅から とぼとぼ歩いた街 自転車の中学生 釣り糸を垂れる好々爺 自分で感じたことなのに するすると 指の間から落ちる砂のように 記憶が瓦解していく 嫌なことも 嬉しいことも 感覚が朧気になり 自然に朽ちる屍のごとく 少しづつ 溶解し ほどけて 脳裏の暗い海に 埋もれていく わたしは 体験が薄れ 遠のいていくのを 安堵と さびしさを抱いて じっと傍観する