郷愁の後に

人の手にまみれ
古ぼけて煤け

手垢にまみれた品々

黒光りする手すり
すり減った階段

皺々の鞄
今にも切れそうな革紐

大事に使われて
摩耗して
角が取れ
鈍い光を放つ

古く
懐かしい
記憶を抱え

甘味も
苦味も
ともに味わって

くたびれきった
ものたち

便利だとか
きれいだとか

快適から
縁遠く

不便で
たいして役に立たない

ただ
古いだけのもの

ただ
生きてきた時を
共有しただけのもの

哀しいくらい
よく馴染んで

換えなんてきかない

世が変わり
人が変わり
技術が変わって

用無しになったとしても

抱えずには
いられない
非合理の塊

人の心の一部
生きづらさの一つ

レトロ風味なんか
及びもつかない

懐かしい品々