歯の無い男

あいつは

いつも

飲み屋の片隅で

焼酎を飲んでいた

 

一品のつまみと

三合の焼酎

 

ちびちびと

つまんでは呷り

 

呷る度に

顔が赤く

 

最後には

どす黒くなる

 

赤黒くなるほどに饒舌

 

ニカっと笑った口の中には

歯は一本も生えてない

 

こうして飲むため

何を失ってきたのだろう

 

どんな犠牲を

払ってきたのだろう

 

ここは

この男の城

 

御大尽だって

ここじゃあ

ただの客よ