街との距離

缶詰の明けた日

街は涼しかった

 

いつも見る

いつも通る

いつもどおりのはずが

 

距離があった

街と自分が離れてしまっていた

 

まだ戻ってきていないのだった

 

浮遊して

地に足がついていない

 

違和感がまとわりついたまま

彷徨った

 

角のお地蔵さんも

煎餅を焼く匂いもした

 

知っているはずだった

それなのに

 

知らない街を歩いているかのような

新鮮さを感じた

 

新鮮であることに困惑した

 

知らないうちに

手放していたのだ

 

街とわたしをつなぐ何かが

逃げてしまった

 

また歩いて

馴染ませて

 

わたしは街に合わせ

街はわたしに切り取られる

 

変わりながら

近づいたり

離れたりを続けて

 

歳を取るのだ