旅の酔いどれ

梅雨入り直後の北国は
雨も風も冷たくて
人々は肩をすぼめ
足早に歩いている

ほの暗い酒場
一杯の燗酒

胃に広がる温かさ
鼻に抜けるアルコール

寒さに縮んだ身体は
ゆっくりと弛緩する

旅先の緊張から
日常の生活から
解放された精神は
杯を重ねるたび
溶解するように
酒気を帯びて

匿名の酔っぱらいとなり
知らない街を
フラフラと彷徨う

酒の力を借りた
つかの間の
自由を謳歌する好機は
私に
世界がどこまでも広がっていることへの
夢想を与えてくれる