どこまでも人

知らない街の
知らない酒場で
知らない人との
とりとめのない話は

旅の醍醐味で
自分が違う場所にいることを
実感する

日常という停滞を打破するのは
大変なことだから
自分の居場所を引き剥がして
知らない世界に身体を放り込んで
精神を遊離させる

誰も知らない場所でも
人間はたくさんいて
飯を食って
酒を飲んで
風呂に入って
せかせか動いている

それを見るだけで
人はどこでも人であって
同じようなことをして生きていて
自分も同じ人間であると
妙な安心に浸り

自分が暮らす日常もまた
大して相違ないものだと思えたら

自分の悩みもイライラも
大したものではないように感じてきて

自分という存在が
人間の類型に収まってしまうことに
気楽さを覚える

人間が皆同じようなものだったら
世の中はつまらないのだけれど
同じようであることで
精神の孤独を癒される時もあり

世界中どこに行っても
人間が暮らしている姿に
勇気づけられることもある