ぶんたん湯

今日の銭湯は
ぶんたん湯

赤ん坊の頭ほどの
ぶんたんが

プカプカ
湯船に浮かぶ

手に抱え
間近で見れば

無骨なヘタ
やわらかくも分厚い肌

湯船の中
目を閉じ

ぶんたんの
匂いを嗅ぐ

グレープフルーツに似た
苦味と甘い芳香

海辺の斜面に
一面に実った黄色の玉

差し込む陽射し
木々の間を抜ける
果実の香り

心に風が吹いて

場末の銭湯の湯船から
どこまでも
遠い場所に行った

そう
どこまでも