山篭り

山の中で一人生活していると
人が怖くなる

家の周りを徘徊する獣
落ち葉を踏みしめる音
水を張ったバケツが揺すられる

ネズミなのかウサギなのか
イノシシなのかサルなのか
それとも世に捨てられた人間か

物音が近づき
玄関の引き戸を開けて
家に入って来るのだろうか

誰か来てくれ
いや誰も来ないでくれ
私を安らかに保たせてくれ

雨戸一枚隔てた隣の気配に怯え
自分を守りたいと願う

それを繰り返して気づくのだ
私を脅かすのであれ
私を守るのであれ
私が私を感じるのは
私以外の存在無くして成り立たないのだと