安堵の匂い

小さい頃
お母さんの匂いを嗅ぐと
安心して
眠れたでしょう

大人になっても
好きな人の匂いを嗅ぐ

心が落ち着く

眼で見て
近づいて
触って

最後に匂いを嗅ぐ

ずっと覚えている匂い
ふと
思い出す匂い

学生時代を思い出せば
あの頃の匂いが

若い時には
若い時の匂いが

脳裏から
浮かび立って

郷愁が
郷臭を呼ぶ

匂いの記憶は
不思議に
悪いものではなくて

いつも
懐かしさを漂わせる

心の匂いを嗅げば
穏やかな気持ちになって

過去が
美しく蘇るでしょう

木の匂い
水の匂い

夏休みの田舎で
夕立を前に佇んだ
大気の匂い

思い出しただけで
やさしくなれる匂い