恨世抄

恵まれない育ちをした

 

片親だった

虐待された

コミュニケーションをとってもらえなかった

 

金がなかった

学歴がなかった

 

容姿が醜かった

いじめられた

 

自分を被害者に仕立て上げるのは

実に簡単

 

立ちどころに材料を探し

いくらでも理由をつける

 

被害者として

己を憐れみ

可哀想な自分に酔う

 

安く口当たりのいい酒は

スルスルと喉を通り

あっという間に悪酔いする

 

そんな哀しい妄想につけ込み

追い詰める者たち

 

甘えるな

お前だけじゃないんだ

 

お前の努力が足りない

自分だけ被害者面するな

 

もっと頑張れ

もっとやれ

 

やる気がないだけ

努力が足りないだけ

 

そう言われて

搾取され

体も心も壊してしまった人々

 

被害者の己に酔いながら

しかし

確実に被害者である

 

全て世の中が悪い

そう言い切れば楽だが

そんなことはない

 

全て自分が悪い

思い込みの激しい

自虐的な妄想者よ

そんなことはない

 

不幸はいつだって

フラフラと揺蕩っている

 

運悪く

当たってしまう

 

掴み取った仕事先が

真黒の地獄だった

 

学校を出たけれど

就職先がない

 

あと一年早ければ

簡単に仕事に就けたのに

 

こんな話

珍しくないだろ

 

そんなんで勝ち組だの負け組だの

一生を決められたら

たまったもんじゃないだろ

 

同じ時代を

しぶとくしたたかに生きる者もいれば

あきらめて生きる意思を失う者もいる

 

どっちだっていいよ

 

理不尽が耐えられなければ

理不尽ごと巻き込んで

爆破してしまえよ

 

それがどんなに反社会的行為だろうと

俺は肯定する

 

自分が生きられない世など

あってもなくても同じだ

 

世のため人のためなど

考えられぬ

 

どん詰まりの隅の隅まで

追い込まれて

 

自分を責めて責めて

居場所を切り取られ

 

もう生きられない

 

そうなっても

差し伸べる手などない

 

ひっそり死ぬか

復讐して死ぬか

 

なぜ死ぬときまで

誰かの迷惑など考えねばならぬのか

そんな配慮など要らぬ

 

死ねよ

壮大に

迷惑をかけて

 

それがお前が生きた証

それがお前の苦しみの形