わたしを忘れる

わたしは

わたしを忘れた

 

人波の喧騒を聞きながら

腰掛けたまま

 

話すことも

考えることもなく

揺蕩っていた

 

わたしが何者で

何を言うのか

 

どこから来て

どこに向かうのか

 

生まれも

行く末も

 

存在すらも

 

忘れられて

幸せだった

 

あるかないか分からず

あろうとしなくて良く

 

努力も必要なければ

何の不毛もない

 

揺蕩って

不感温度の風呂に浮かぶように

 

何もせずにいられる心地よさが

身に沁みる時だった