どうで死ぬ身だったのか

石原慎太郎の訃報には

納得がいった

 

もう書いた

不幸な死でもない

 

西村賢太の死は

受け入れられない

 

まだ書けた

 

私小説の面白さを

今の時代でも見せられた

 

早すぎる

 

文体も

ナルシズムも

自己破壊への衝動も

 

まだまだ

掘りさげて

書き続けられた

 

書いたものを

いくら読んでも

 

読み足りない

 

中上は

もっと若くして死んだが

十分書いた

 

むしろ

最後は息切れがするほどであった

 

だが

西村賢太は書ききっていない

 

彼の作品は

彼にしか書けず

 

彼を継ぐ者はおらず

 

彼は彼のまま

文学史に浮遊することになる

 

田中英光より

藤澤清造より

 

書けたはずの場所にいて

亡くなってしまった