寂れて
人もいなくなった酒場では
なぜ
胸の奥が薄ら寒いのだろう
安い酒
安い肴
白熱灯に照らされた
おでんの舟
酔って
気が狂っては
嬌声と
怒号が飛び交い
忘れたい過去が
蘇り
名無しの群れが
下を向いて
盃を傾ける
混乱と破綻
一歩手前の千鳥足
何も考えられず
汚い酒場の
しみったれた匂いだけが
脳裏にこびりついている
この場末臭が
体に染み込み
全身を冒し
未来を奪い
やがて
わたしを崩してゆくのだろう