雨中移動

豪雨は

全てを奪ってゆく

 

目の前は水のカーテン

轟音の世界

 

走った

車に全てを託した

 

行きの道は通れなくなった

人のいる場所に出たかった

 

濁流が暴れている

側溝は噴水

 

水の中を

走った

 

すれ違う車が

煙を吐いた

 

道が水に埋まってゆく

追い込まれ

追い詰められ

 

行き場のない恐怖のなか

豪雨は降り注ぎ

 

嵐の音に

わたしは奪われていった

 

考える余裕なく

一本の道を走る

 

幾つもの冠水を越え

車は滑り

エンジンは唸りをあげる

 

絶望の足音が近づき

抑え込んでいた恐怖がほどけ

 

狂乱の終末は

予感から確信へ

姿を変えた

 

雨中

もう動けない

 

遠くでの雷鳴

滴る雨粒

 

待った

待つしかなかった

 

終わりを覚悟した

 

この生を納得できたのか

 

そればかり

考えていた