叩く
どこかで
叩く音がする
真夜中の
マンション
ひと気もなく
寝静まった闇に
コンコンコンと
叩く音が響く
聞いていれば
聞いているほど
胸の奥から
抑え込んでいた感情が
顔を出す
過去の記憶
遠くを夢見ていた追憶
焦燥に駆られ
心を焦がした夜
キツツキが
木を叩き
虫を追い出すように
追想は溢れ
時も忘れ
意識が混濁して
夢中の人となる
コンコンコン
魔術のように響き渡る
音に心を乗せたなら
こんな夜には
たちまち全てを奪われてしまう
甘くも苦い過去によって