記憶に沈む

かつて訪れた街が
思い出深い場所が

変わり果ててしまった

多くの人が跋扈し
派手な装飾の店が並ぶ

あるいは
人の姿が絶え
自然に還ってしまうかと思うほど
荒れ果てている

変わるのは当たり前

人が住んで
動いて
変わっていく

ただ記憶だけが
変わらなかった

不変のまま
数十年が経ち

現実は想像を
追い越し

風景は
人を驚かせる

ただ
それだけ

それだけのことに
ショックを受け
胸が震える

自分が
思い描いていた世界が

知らず知らずのうちに
侵食されていた

世界の変化に
気づかなかった己に驚き

納得もできず
だからといって
抵抗も出来ようはずがない

記憶は
現実と離れ離れになってしまったのだ

現実など気に留めず
美化し続け
回想の快楽に耽り
記憶の世界の住人となって

ただ今の現実とも手を切り
世界と離れていく

漂流する丸木舟
どこに向かうか分からない

そういうのも
いいのさ