匂いの懐かしさ

沈みゆく夕陽を
眺めていると

失ったふるさとが
思い出され

胸が
締めつけられる

もう無くなってしまった
数々の愛着

飴色に馴染んだ色合い
丸く柔らかい手触り

そして
古めかしさを香り立てる
匂い

わたしの時代は
すべて過去になってから
匂いを帯びる

思い出は
匂いとともに
立ち上がり

風情と懐古と
わたしだけの季節を
脳裏に刻みつけ

生理的な感覚的な
過去として
反芻されては

より美しく
良きものとなる

ちょうど言葉による過去が
悔恨と反省とともに
蘇るのとは逆に