高齢口禍

かつて
東京タワーが世界一高かった時

高く伸びる塔は
発展と豊かさの道標で

成長していく自分と
変わる世界は
希望に満ちた未来だった

そんな社会の空気だった

けれども

実際は貧乏で
田舎に暮らし
赤いほっぺで鼻水垂らし
何度も拭いた袖口が
テカテカに光るほどだった

今は逆

豊かできれいで清潔で
モノは持っているほうが邪魔なくらい

けれども

将来が不安で
格差ばかりが気になって
みんな心配してる

昔のほうが
貯金も社会保障もなかったけど
なんとかなると思ってた

今は何とかなるはずなのに
不安のことばかり考える