力士

田舎の湯治場で
相撲部屋の合宿にはち合わせた

風呂場は力士で埋まり
排水口には泡が盛りあがる
浴槽に入ったら
お湯が三分の一しか残ってない

それでも
良い気分だった

巨人の世界に迷い込んだような
奇妙な困惑があり
同時に
力士の体が発するエネルギーに
圧倒されながら憧れを抱いた

かつて相撲が神事だった頃
大きく強い力士を畏れ敬い

横綱は注連縄を締め
四股を踏んで地を鎮めた

目の前で
力士を見て

並外れた体躯の
存在の確かさに
頼りたくなる気持ちを知った