慣性のそして流浪の言葉

その言葉は
身体より出て

人にまとわり
人に寄り添い

人をあらわし
人に向き

場所を越え
時を飛んで

発した身体が亡びようと
言葉として立ち

美しく
猛々しく
禍々しく

人を酔わせ
人を狂わせて

人へ還っていく

その還流に嚥まれ
流されているのだから

たった一言の
言葉に溺れ

辿り着く当て所なく
漂流しつづけ

目的をもたず
慣性に任せ

ただ流れることへの
耽溺から

生まれる言葉があっていい

不感
鈍感

惰性
堕落

研ぎ澄まされた
鋭さをもたずとも

時代に流されたまま
動かずとも

内向し沈殿していく
言葉を探し出す

そんな人がいてもいい