夜のレンズ

朧月夜に響く
哀愁の音

老婆一人かがみ
丸眼鏡拭く

使う当てのないレンズを
から拭きして

磨いて
磨いて

磨くことしかできず

磨いても
何もならないのに

いつまでも
磨いている

無意味で
退廃の匂う反復

だが
きっと

自分が同じところに
おさまれば

同じようにやると
確信する

意味ではなく
行為に依って
酔いしれて

安堵の眠りに
つきたいと

人は
願うものだから