ツバメの巣立ち

宿の軒先には
ツバメが巣を作り

子供たちは
親とたいして変わらなくない
大きな体で餌を待つ

梅雨明け間近
激しい雨のなか

親ツバメは
餌を探し
飛び回る

雨が降れば
鳥も羽を休ませると
思い込んでいた私は

天候に関係なく
空腹が生き物に訪れる
当たり前の事実を忘れ

子供を飢えさせないため
雨中に飛ぶ
親ツバメに

己の
想像力のなさを
思い知らされた

翌日
快晴の暑さの下

若いツバメが
ひょこひょこと
電線に渡り

不安げに
巣から出て

ようやく得た
自由の使い途に困惑し

おぼつかない様子で
佇んでいる姿に

親もまた
子の行く末の心配と
肩の荷が下りた安堵に
浸っているのではないかと

すでに住む者のいなくなった巣に
生き物の循環を思い
得心したのだった