イカゲソを噛み締めて

大都会の駅前にある

安酒場は

どうして汚くて暗いんだろう

 

ただ安くて

便がいいだけで

 

不味くて

無愛想で

胡散臭い

 

宿木にする者たちは

うつ向いて

内省しているようだ

 

安酒を啜り

イカゲソをかじれば

 

汚さも無愛想も

どこ吹く風

 

話し相手もいなければ

ますますゲソを齧るだけ

 

少しずつ

ちびちびと

齧っては啜り

 

ただ時が経つのを待つ

 

酔いが回れば

世界は私のもの

 

過去も未来もバラ色

 

味がしなくなるまで

ゲソを噛み締め

 

つかの間の

幻想に浸る

 

噛みしめるほど

心は大きく

子供のごとき鈍感さに支配されて

 

裏腹の現実は

ダシガラとなる