匂いのしない冬

今年の冬は

生暖かい

 

風も吹かず

木も揺れず

 

霜も降りず

霜柱も立たず

 

土の匂いも

鼻をつく

風の寒さも

 

ちぎれるような

耳の痛みも

 

緩慢に包まれ

五感を麻痺させる

 

穏やかさと

しどけなさと

 

気だるく

うららかな日々よ

 

匂いの立たない街の

片隅には

 

今日も

泥酔した男が

寝転がる

 

このまま

落ちて

 

朝陽に

眼を瞬かせ

 

帰るところがあるのだろう

 

朝になれば

風も変わり

 

わたしもまた

変わる