愚考

チリリン

自転車のベルが鳴る

 

チリリン

またベルが

 

チリリン

再び鳴った

 

混み合う歩道で

いらついているのが分かる

 

抜きざまに

舌打ちをされた

 

オレは

自転車の後部を蹴り飛ばす

 

後輪はブレ

ヨタヨタとガードレールに寄りかかる

 

いきり立った運転手が向かってくる前に

 

走っていって

足を蹴飛ばし

顔を殴りつけた

 

思い切りやった

思いっきりだ

 

彼は驚いたように頬を手で抑える

 

フードを掴んで

引きずり倒し

 

ヘルメットの上を

何度も踏みつける

 

頭を抑え

抱え込んだら

 

今度は横腹を蹴る

 

肘で横腹を守れば

さらに顔を横から蹴り上げる

 

首が弾け飛んだ彼は

うなだれ

抵抗する様子もない

 

まあいいか

 

人生で一度だけ

鬱憤を晴らした

 

パトカーのサイレンが

夜に響き

 

オレは

この愚行と

暗い未来が脳裏によぎり

 

それならば

今の快感を

できるだけ噛み締めようと決めた