記憶の尺度

到来する寒波さえ

どれほどのものか

 

記憶によってしか

理解できない

 

この寒さも

経験だけが判断する

 

酒の旨さも

人の良さも

 

記憶を頼りに

判断して

 

辛辣な記憶と

甘美な記憶の

どちらに寄り掛かるか

 

気分で決めて

 

いつの間にか

記憶に酔っている

 

世界を美しくするには

記憶を更新し

 

過去の引き出しから

快楽を抽出する

 

記憶に囚われるのは

避けられずとも

 

新たな記憶は

作り出せるのだから

 

どこまでも

積み重なる

記憶に

信頼をもたらすために

 

明日はあると

信じて

 

昨日死んだ

彼の人を

 

心中で弔う