歌を想えば

気分転換でも

暇つぶしでも

 

詩を書いているのなら

その時は当事者で

 

真剣に書いていないからダメだとか

遊びだと馬鹿にしたところで

 

文学の裾野は広く

動機など千差万別に

名作は成立する

 

作品そのものをよく読めば

切実さがあるか否かは

すぐ分かり

 

意外なところから

心打たれることもある

 

風狂の詩人

当ても知れず詠んだ歌

 

一日に百歌も読むほどに

適当で粗製乱造な

 

正岡子規

石川啄木

 

感激するのだから

仕方がない

 

騙されるのかと思うほど

言葉に心躍り

 

風景が

情景に移り変わり

 

彼の眼が

心に重なって

 

いつしか

追想がはじまる

 

目の前の景色が

時を駆けて

 

彼の情感と

私の記憶の奥底に隠れた

 

懐かしさと

気恥ずかしさが

よみがえり

 

くるおしくも

否定のしようがない

 

魂のやわな

傷つきやすい

核に触れてくる

 

つつかれて

心は震え

 

もはや無防備なそれは

感じやすい

一個の無垢な玉となる