焦燥

嫉妬は他者への否定的な感情
憂鬱は自己への否定的な感情

どちらも背後には焦燥があって
人はつねに誰かと自分を比べている

誰かが先へ進む
出世したり成功したり
結婚したり出産したり
自分に叶わないものを手に入れる

過去の自分と今を比べる
若くエネルギーに溢れ
社交的で
傷つくことを恐れず
今では失ってしまった時間と体力を手にしている

立ち止まっていたら失望は大きくなるばかりだ
動かなければならない
それが焦燥となる

人はすでに手に入れたものに無頓着なくせ
手に入れたいものや失いそうなものに拘泥する
それが焦燥となる

手に入れようとする渇望も
手放そうとする諦念も

どちらも大切で
どちらも見苦しい

哀しいかな
焦燥を感じたときには
もう目に見えて差が開いてしまっているのだ

できるのは
焦燥に身を焦がしながらも
不快を身に受けながらも
刹那的な蛮行に身を任せず
望む方向に
一歩ずつ進むことだけなのだ