春の喧騒

冬の冷気が緩み
生命がうじゃうじゃと騒ぎ出す

羽虫が飛び
カエルが鳴き
水が濁り
桜が咲く

雑多で混沌とした
鳴動の予感の下
人は別れ巣立つ

春は不安の季節
先は見えず
足元はおぼつかず
弛緩した大気に包まれ
どこか上気している

喧騒が晴れ
五月の強い日差しが
景色に輪郭を与えた時

初めて気づく
自分は一歩踏み出していた

前を向き
前の世界に別れを告げ
もう自分は過去の自分ではない

到来した新しさを歓迎しつつ
一抹の哀しさがよぎる

それを自覚するまでの過程
それが春だ
青春だ