大衆のもの

かつて
大衆という言葉は
我々の味方であった

大衆食堂
大衆文学
大衆娯楽

安い
安心できる
身近に手が届く

我々と共に在り
我々の生活を支え
我々が共有するものであった

それが今
世間に氾濫するのは

差別化
一味違う
ちょっと豪華な

他の人より
自分が良い思いしたい
自分は他の人間とは違う
そんな言葉が並ぶ

人並みに過したい
から
人並みでは嫌
になった

人と比べて
自分のほうがいい思いをしたい
そんな考えがはびこる世の中は
さもしい

人のあり方は違っても
ホモ・サピエンスなのは同じだ
自分らしく生きながらも
相手も自分と同じ人間なんだと
肝に銘じている
大衆という言葉には それが滲んでいる