人に優しく

人にやさしくするとき
全く違う二つの気持ちが
背後にある

一つは
信頼に満ち
相手を大切に思って
気持ちを通わせたいという動機

もう一つは
信頼が崩れ
すでに修復不能
気持ちを通わせたくない
揉め事を避けるため
自分を守りたいという動機

丁寧に丁寧に
頭を下げ
激情の棘に振れぬよう
作り笑いを絶やさず
その場を切り抜ける

親切にすればするほど
気持ちは離れ
自分を守るため
自分を偽る

もう本音は話せない
近づくたびにギスギスする
心は悲鳴を上げる

辛ければ辛いほど
優しくなり
諦めが満ち
優しくすることに
意固地になる

そんな優しさは
わがままの裏返しで
相手を裏切り続けながら
自己をも惑わせ苦しめる
時限爆弾のようだ