死者と夢

友人と遊んだ楽しい夢
それが覚めた時

ああ
あいつ死んでたんだ
と気づく

こんなことが増えた

死は特別でない
それどころか
夢も思い出も死者に覆われていき
もう少しすれば
記憶の多くも
死者のものになる

若い頃
本を読み映画を観て
肉体より精神の世界のほうが広く
遠くへ飛んでいきたい
と願っていた

肉体はこわばって
死と夢と記憶による
現実と離れた世界が
私を支配しようとしている

願いは叶った
だが煤けていた

古ぼけた精神が
現世から遊離しようと
ふらふら漂っている

失望はない
嫌ではない

生れたばかりの
ふわふわと
足どりのおぼつかない赤ちゃんのように
少しずつ現実から足が離れていく

悪い気分ではないのだ
人と別れるのがちょっと寂しいだけだ