酒屋閉店の日

今日ひとつの店が閉まった

満員の店内
花束を贈る人

飲んで
飲んで
何百回も飲んで

店は淡々と閉まった

名残を惜しむ人は
店の前に佇み

手持ち無沙汰に
時間を浪費し

仕方なしに
他の暖簾をくぐる

知らない同士
酒酌み交わし

50年続いた
店の噂話を
どこまでも
続け

酔いも回り
馬鹿騒ぎの様相を呈す

その明るさが
寂しさを打ち消すための
足掻きにも映る

明日からの
この街で
宿木をなくした
左党の人情を
照れ隠す

不器用で
不自然な
終焉

美しい最後の日