秘密基地幻想

少年の頃は

家々の隙間や

路地を駆って

 

道ではない通り道を

探していた

 

バラック

粗雑に建てられたアパート

 

ビルの谷間

境界線や空き地

 

曖昧で粗雑な都市計画に

恩恵を受けて

 

誰もいない

誰も知らない片隅に

居場所を求め

秘密基地に憧れた

 

大人の目が届かない

子供たちの場所

 

学校よりも

児童館よりも

 

我々だけが支配する

秘密基地

 

ひたすら自由で

自分たちしか知らなくて

解放感に満ちた空間

 

子どもは所詮

どこに行っても

大人の監視下にあって

視線から逃れられなかった

 

ただ

それから逃れるためだけに

隠れ家が欲しかった

 

小さくても

みすぼらしくても

 

自分たちには

楽園が築けると

夢見ていた