愛憎ひとつ

自分が手に入らなかったもの
自分が手に入れなかったこと
自分が近寄れなかったもの
自分が遠ざけたことを

相手が持っているとき
それと自己愛が混ざり合って
憎しみが生まれる

手に入らなかったもの
近寄れなかったものを相手が持っていたら
好意や憧れが嫉妬になり、羨みになり、妬みになる

手に入れなかったこと
遠ざけたことを相手が持っていたら
自分と違う他者を睥睨し、侮蔑し、嫌悪するようになる

自分が持っていないものに好意を寄せるか悪意を持つか
自分のできないことがある世界がうれしいかくやしいか

思い通りに振る舞える世界は狭いのだ
一歩引いて俯瞰すれば世界は広がるのだ

だが、世界を眺めているだけでは何も手に入らない
憎しみをなくそうとすれば気の抜けた炭酸みたいな人格にしかならない

手に入れよう
つかみ取ろうという意志は
生きることそのものだ
それが上手くいかなくて憎んでしまうのだ

憎くて憎くて憎くて
くやしくてくやしくて
わがままで身勝手で
ちっぽけで

そんな私であったとしても
この世にいる

上手くいかなくたっていい
憎しみの塊であっていい
わがままな私であれ

だが私よ
私を憎まないでくれ
自分自身を憎まないでくれ
自分自身が何かに奪われてしまったら
生命を燃やせなくなる

膨大な燃焼機関となりつつも
俯瞰していたまえ