誰にでも傷がある
痛く
痒く
ときに疼いて
過去を思い出させる

大概の傷は
放っておけば治る
治ってしまう

だがもとに戻らない傷もある
指をなくし
腕をなくし
歯が欠け
目が潰れる

そうなったら
治ることを願うのは辛い
もとに戻らないことを当たり前にしなければならない
怪我の前の体が完全で
今の私は不完全だと思ってはならない
怪我を負った己を認めて世界を再構築する
欠損した身体が惨めにこわばらないように
精神を広げる

体の怪我は明らかだ
心の怪我はどこまで重いか分からないことがある
放っておいて治ると思っていたら
いつまで経っても治らない
そろそろ治らない己を認めなければならない
なんにも持っていない自分に気づかなければならない
ダメでもともと
卑屈でいるよりつらくはない