アートの間口

たまに落語を聴くのは面白いが
どの噺家が技量があって
どんな工夫をしているのか
よく分からない

落語をよく聴く人は
こまやかな
話芸の妙に
神経が行き届き

噺家の力量や
聴きどころや
面白さが分かるのだろう

かように芸術は
見る側にも
経験や見識が必要で

見て
知って
理解して

さらに鑑賞を楽しめ
見る目が磨かれる

ところが
カンバスを真黒に塗っただけの絵や
音を奏でない演奏は

見ただけで分からず
解説や評論家の文章を読んで
感覚よりも
理屈で納得せざるを得ない

子供の落書きと
区別の付かない絵なのに

肩書きや理屈で

目ン玉が飛び出るような
値段が付いて
美術館にうやうやしく
飾られる

芸術は
表現は
間口が広くあるべきで
多様だから

どんな作品だって
世の中にはあるべきと思うけれど

作品を楽しむ前に
肯定するための理屈や知識を
必死になって勉強し

理解することに
権威がまとわりつくような
鑑賞のあり方は

絵そのものより
絵を通した社交や
社会的な振舞いの
産物に思える

それは
ワインを飲んで
おいしいか否か判断するよりも

産地や品種や格付けを
披瀝する振舞いに似て

作品よりも
肩書きを大切にしているようだ