死にかけの記憶

人生で死にかけた経験
よく思い出せない

小学校に上がる年頃
一週間ほど
42度の熱を出したらしい

苦しかったかどうか
憶えていない

ただぼうっとしていた

熱が下がって風呂に入ると
皮が剥けるように
垢がこすれた
そちらのほうが憶えている

あれから
長く生きたけれど

あの時
死んでいたとしても

あまり変わらなかったのかもしれない

何度か
生きてて良かったと思い
何度か
生きていたくないと思い

生きてきた時間を
無為に捉え卑下する気はないが

生きていなかったとしても
それほど悪くなかったのではないか

家族を悲しませるから
普段は言えないけれど

生きる実感を得ようとし
燃え尽きたあしたのジョーみたいな人生に
憧れる気持ちはあれど

実際の自分はフワフワしていて
生きてるんだか
死んでるんだか
分からないような
掴みどころのない人生を送り

それで良いと言うよりは
仕方がないという
消極的肯定に支配されて

今日も
ヘソを出して寝ている