焦燥の秋

秋の風は
生き急ぐ人を弄び

豊かな実りの最中に
一抹の不安を
かき立てる

黄色に染まる銀杏も
柿が赤く熟れるのも

来たるべく
冬の前に

一刻も早く
その身を目立たせて

繁栄に
ケリをつけたい衝動の果てに思え

豊穣で
穏やかな収穫の

次に訪れる
厳しい季節が
其処此処に
見え隠れする

なればこそ
今の実りを

精一杯に享受し
秋の享楽に酔うのも

世界を噛み締める
またとない術であるべきだから

爽やかな風の中に
軽やかに
次を思わず
歩いていればいい