憧れの死に方

小さかった頃
人が死ぬと知った時

こわくて
こわくて

夜も眠れなかった

自分が死ぬのも
怖ければ

家族が死んでゆくのも
耐え難い

だけど
死は必ずやってくる

どうしよう
どうすればいいんだ

考えて
考えた挙句
願うようになったのは

もう死ぬという最後の時
家族全員で

おじいちゃんと
おばあちゃんと
お父さんと
お母さんと
わたしで

おんなじ部屋で
布団をならべ

寝入るように
死んでゆくこと

一人一人と
別れるのはつらいから

家族で一緒に
死を迎える

あれから数十年

一人
また一人と
家族は亡くなってゆき

小さなわたしの妄想は
実現もしなければ
願うところでもなくなった

それでもなお

あの時
抱いて眠った気持ち

死別のかなしさ
死への畏れ

根っこにあるのは
同じもの

子供っぽくても
幼稚でも
馬鹿になんかできない

わたしのなかに
残る熾火