料理屋の親父

かつて

一流の料亭の

立板だったのに

 

いまは

場末の露店で

200円

300円の

惣菜を売っている

 

どんな気持ちなんだろう

 

過去は

彼に何をもたらしたのか

 

プライドも萎え

肩を落として

トボトボと現実を歩むのか

 

昔にすがりついている

だからこそ

生きられるのか

 

この店には

過去しかない

 

精気を失った

彼が作る味は

 

安くて

旨くて

哀愁に満ちている

 

傾き

崩れ落ちそうな

この地で

 

彼の料理に

舌鼓を打てば

 

奥から

静かな

ため息が漏れてくるのだ