哀怒小景

今日も裏道で

猫が喧嘩をしている

 

女将さんは

子供を叱りつけ

 

枯れた植木鉢が並ぶ道を

熱波が通る

 

砂と埃と

トタン屋根の長屋

 

人情なんて作り話

 

怒号が飛び交い

泣き声が響く

 

カラカラに干からびた

人情と財布の中身

 

ゆとりも潤いも

要らない

 

腹に含むところがないのは

ただ遠慮なく

ズケズケと言いたい放題なだけ

 

本音なのではなく

口が悪いだけ

 

裏町の

荒んだ人々は

 

こうして

たくましく生きて

 

泣き笑いしながら

やっぱり寂しい