殺害を想う夜

存在を抹消したい人はいますか

殺したい人はいますか

 

自分の人生を差し出してまでも

この世からいなくなって欲しい人はいますか

 

深夜

悪夢から起きて

 

暗い過去を

闇の中に省みる

 

あいつがいなければ

あいつさえいなかったら

 

こんな暗闇で

涙を流すことなどなかった

 

ささくれ立った霜焼けの手で

皿を洗う人生などなかった

 

俺が洗った皿に乗る

高い料理を

あいつが食う

 

なぜ騙した

なぜ貶めた

なぜ嵌めた

 

人の無知につけ込み

人権などまるで無視の

過酷な労働をさせた挙句

 

体が壊れたら

ポイ捨て

 

俺はあいつを殺してやりたい

 

俺が死んだって

命を差し出したって

 

あいつを殺してやりたい

 

前を向こうとか

恨んだって仕方がないとか

 

気持ちが一つも入っていない

きれいごとは

心に響いてきやしない

 

世界が理不尽なのは

俺だって知ってる

 

俺と同じ境遇で

人を恨むことなく

真面目に生きているやつだっているだろう

 

だが

俺は命を削った

 

削られた命は

金になって

あいつの懐に入った

 

あいつに怒鳴られ

鞭打たれてまでも

必死に働いた

 

一日15時間働いて

残業代など出たことがない

 

働いて働いて

体が壊れても

 

保険も年金も

何もなかった

 

そんなことも

知らないで働いていた

 

馬鹿だろう

 

俺は馬鹿だった

馬鹿だったよ

 

自分の権利も

労働条件も何も知らず

働かされていたんだ

 

知らない方が悪いって

後で散々言われた

 

そうなんだろうな

俺が知らなかったから

悪いのは俺なんだな

 

だが

知ってて

こき使ってた奴はいいのか

 

ずる賢く

法律の目をくぐって

 

働かせて

滅茶苦茶にして

使い捨てた奴は

賢いやつだったのか

 

法律のことも

世の中もルールも

 

俺にはよく分からない

分からないけれど

 

あいつはずるい

 

他人の人生を

使い潰して

私腹を肥やす

 

あんな奴が

この世にいるのは

我慢ならない

 

殺してやる

 

俺自身が

破滅したとしても

絶命したとしても

 

法律が

この国が

あいつの側について

あいつを守ろうとしたとしても

 

殺してやる

 

あいつだけは

殺してやる