地獄スープ

煮立った湯船に

ぶつ切りの肉体

 

血で濁ったスープから

腐臭が匂い立つ

 

ここは地獄の一丁目

釜茹で地獄のど真ん中

 

いや

現実であった

 

目の前で

魔女が

人を煮込んでいる

 

次々と風呂に放り込まれる人々は

ぐったりとして

悲鳴の一つも上げはしない

 

流れ作業で

人が運ばれ

煮込まれてゆく

 

息が苦しい

 

煮込まれたスープは

どぶ色をしていて

 

布で濾す時には

人の姿など

跡形もない

 

ブクブクと泡立って

生姜とにんにくをたっぷり入れて

 

人はそれを

美味しい

美味しいと言って

飲む

 

飲めば

立ちどころに

腹が膨れて

 

幸せの下に

昏睡が訪れ

 

そいつらが

再び

スープの素として

煮込まれてゆく

 

いつになっても

スープは無くならず

大評判

 

トロトロで

グダグダで

旨みたっぷり

 

あの臭さ

忘れられない臭さが

 

否が応でも

食欲を唆る

 

この地獄の底まで

落ちていっても

なお食べたい

 

地獄のスープ